心臓を貫かれて



心臓を貫かれて
心臓を貫かれて

ジャンル:歴史,日本史,西洋史,世界史
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内容はドキュメントだが、彼が訳せばあくまでも村上春樹の世界になる

内容はドキュメントであり、悲惨なアメリカ人家族の話になり、現代の低層階級の多くのアメリカ人の生活感が色濃く出ていながらも、兄が犯罪に染まり、死刑になり、家庭の構成員はみは非社会性を持ち合わせた集団であり、その事実に自己の歴史を主人公が語る物語であるが村上春樹が訳せばあくまでも村上春樹の世界になるのは、なぜだろう

あくまでも彼の訳により、村上ワールドになってしまうのは、不思議だ。

一族代々の歪んだ感情の歴史

殺人犯ゲイリー・ギルモアとその一族の歴史を実弟が詳細に書き下している。その文章はとても冷静でありつつも家族への愛情を強く感じる。

ゲイリーひとりが悪かったわけではない。それが遺伝なのか、怨念なのか、環境なのか(おそらくは環境が最も大きな原因だろう)一族代々の歪んだ感情の集大成が、ゲイリー・ギルモアの代で殺人という形で、世間に現れてしまったのだと思う。

家で飼われていた犬ですら、なついている人間以外には凶暴で人を襲い、処分されてしまう。まるで一族の呪いが犬にまでしっかりと受け継いでいるようで悲しい。

ゲイリーは生まれた時から家族は定住せずに、何かに追われるように、アメリカ国内を転転と移動する生活をおくっていた。父は母に激しい暴力を振るい、子供にも理由なく暴力を与え続けた。安らかな暖かい家庭とは程遠い生活。

一方で、ゲイリーは本来、頭がとてもよく、芸術的センスに優れハンサムで魅力的な人物だったらしい。

不幸な過去に決別し、幸福の道を向きさえすれば、人並み以上の素晴らしい人生を得ることができたと思う。それでも、その時にあえて最も不幸だと思う方向へ進んでいくのはなぜだろう。

それほどまでに、子供時代に受けた恐怖や憎悪は骨の髄まで染み込み、その人の一生を狂わすのだろうか。

ゲイリーの最後の言葉は
There will always be a father
「いつもそこには父なるものがいる」(村上春樹訳)
父の死後もずっと部屋の片隅にいる、目をぎらぎら光らせた父の影に怯えているゲイリーの様子が浮かんでくる。

ゲイリーが死刑を望んだように、日本でも「死刑になりたかった」と話す凶悪犯が増えてきた。ある死刑囚は子供時代、父親から激しい虐待を受けていたという。

現在、妊娠中の私。絶対に絶対に、圧倒的に弱い立場の子供を犠牲にしてはいけない。自戒の意味も込めて12年前に買ったこの本を読み返した。

目を背けられない何か

酷くむごたらしい描写、目を背けたくなるような事実が次々と描かれるのにもかかわらず、殺人者の弟である著者は酷く理性的だと感じた。
いや、理性的というよりも、当事者の一人であるはずの著者が、ここまで感情を押し殺せるのかと驚くような、淡々とした筆致なのだ。

出てくる人物は皆哀しい。それは、例えば恵まれない環境で幼少期を過ごさざる得なかった殺人者、といった同情心から生まれる感情ではなく、人が生きるということの根底に流れる哀しさだ。
人が生まれ落ちたときからそれぞれが背負わざる得ない、一種の不幸やどうしようもない哀しさは、ここまで人生を浸食していくものなのかと、読み進めながらも呆然とした。

著者の視点は最後までぶれず、ただ事実をひたすらに積み重ねている。それがなおさらに、とても哀しいのだ。
最後に、著者自身の今が描かれる。私はそのときになってようやく、著者自身が今も背負い続けている暗闇を垣間見た気がして、心底ぞっとし涙が溢れた。

単純に、死刑制度問題や、人間の業の深さといったものを描いた本ではない。
重層的に重なった人々の人生を通して、読者に目を背けたくても背けられない現実を突きつけてくる。
Rockとの出会い

著者のマイケル・ギルモアはローリング・ストーン誌のライターでした。彼が兄弟の中で唯一まともな人生を送ることができたのは、おそらく末弟であったため、暴力的な父親との関わりが比較的少なかったからなのでしょう。
でもRockとの出会いが彼を救ったのではないか、Rockが少なくとも何らかの助けになったのではないか、そんなふうに思ってしまいました。
心のかたち

読み始めたとき、
文体が回りくどいのと、
例えば「地獄」とか言った重苦しい言葉が
並べられるのを見て、
最後まで読み進めると退屈するのではないかと
思いました。
そんなふうに殺人事件を語るのは陳腐だと
思ったからです。
しかし読み終えて感じたのは、
重苦しさでした。
それは、
この書物が人間の心は

一般に思われているほど自由ではないということを、
いわば、実証してしまったからだ、
ということもあると思います。
それと、
人間が夢をみたり、病んだり、信仰をもったりするのは、
それがそのまま、
思考の形とか生き方として必然性を持っているからではないかと、
思わせるところが、
この本の特質ではないかとも思いました。



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